裁量労働時間制とは、実際の労働時間でなく、あらかじめ企業と労働者で規定した時間を働いたものとみなし、その分の賃金を支払う制度です。労働者が自らの裁量で働く時間を決められるため、生産性向上につながります。
裁量労働時間制には、「専門業務型」と「企画業務型」の2種類があります。
【専門業務型裁量労働時間制】(労使協定)
業務遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務として、厚生労働省令及び大臣告示で定められた専門的な業務に従事する労働者が対象です。例えば、システムエンジニア、プログラマー、新聞記者、編集者、デザイナー、コピーライター、研究開発者、建築士、税理士などが該当します。
【企画業務型裁量労働時間制】(労使委員会)
事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務であって、業務遂行の手段や時間配分等を大幅に労働者に委ねる業務に従事する労働者が対象です。例えば、経営企画、営業企画、人事・労務、財務、広報などが該当します。
なお、どちらの制度も導入するに当たっては、労働者本人の同意を得なければなりません。
また、専門型は労使協定、企画型は労使委員会で本人同意に関して以下の事項を定める必要があります。
① 労働者本人の同意を得なければならないこと
② 同意をしなかった場合に不利益な取り扱いをしてはならないこと
③ 同意の撤回に関する手続
なお、その時間数については、労基法38条では「協定で定める時間」が1日あたりでなければならないとは規定されていないものの、通達(昭和63年3月14日基発150号)では、1日あたりの時間数と回答がでている。
そこで、1日あたりのみなし時間数が、法定の労働時間を超えている場合には、その超えた分について時間外手当が必要となる。
ただし、それを月給で支払う場合、1日のみなし時間数を月ごとに労働時間数に換算すると、労働日数が月ごとに異なり、時間外手当を毎月算出するのは、処理が煩雑になるので、最大もしくは平均の日数で計算したうえで、毎月固定とすることをお勧めする。
(ex.1日あたりのみなし労働時間を9時間とした場合、1時間が時間外となるため、時間単価×1時間×最大日数(or平均日数)を時間外手当として毎月固定で支払う)
さらに、この場合、時間外が発生しているため、36協定の締結も必須となる。
また深夜・休日に働いていた場合については、その分は別途支払う必要あり。
ただし、会社としては、従業員に時間管理を任せているため、深夜・休日の労働時間の把握が難くなる。
そのため、会社としては、原則禁止としておくことが望ましい。
そのうえで、どうしても必要な場合については、届出制にする。