通勤途中での事故により、従業員が加害者となってしまった場合、会社を含めて訴えてくるケースがあり得る
民法715条では、「会社は、従業員がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う」とある
通勤は事業そのものではないものの、業務を行うために会社に向かうことであるため、民法では会社責任を問われる可能性は大いにあり、その場合には多額の賠償金を支払うことが想定されるため、基本的には禁止としておくことが無難。
ただし、通勤に公共の交通機関を利用するのが不便な地域に住んでいる等の理由で、自動車もしくは自転車通勤を認める場合には、運用規程の整備を行うことが必須。
また規程を整備するだけで足りるものではなく、安全教育、更新手続きなど、定期的に行い正しく運用していく必要があり、それには手間がかかるため、それが適正にできないのであれば、会社として禁止しておくほうが望ましい。
<規程の整備>
次のような項目を盛り込む
・保険加入は必須(対物対人は無制限)※保険証券の写しを提出させて内容を確認
・過去の違反を記録 ※免許証の写しを提出。
・通勤以外での使用禁止(ex.取引先への移動、備品の買い出し等)
・安全教育のための定期的な講習会の実施
・年1回、利用更新の手続き
・通勤費(自転車は雨の日等の運用を含む)
・駐車場および駐輪場の確保
・罰則
★参考判例(自動車事故)
最高裁平成元年6月6日判決=使用者責任を肯定
福岡地裁平成10年8月5日=使用者責任を肯定
広島高裁平成14年10月30日=使用者責任を否定
★参考判例(自転車事故)
広島高等裁判所松江支部平成14年10月30日判決=使用者責任を否定
東京地方裁判所平成27年3月9日判決(平成26年(ワ)15934号事件)=使用者責任を否定
東京地方裁判所平成25年8月6日判決(交民46巻4号1051頁)=使用者責任を肯定
★参考条文①民法715条
(使用者等の責任)
ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
3 前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。
★参考条文②自賠責法3条
(自動車損害賠償責任)
自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。